謎の日本縦断 その1

組織の頭脳であるボスの指令は、いつも突然だ。今回の移動行程は、推理作家でも思いつかないだろう。まずは車でフェリーに乗り本州に渡る。高速に乗り富山へ向かえとのこと。

 

20時15分 函館発青森行きのフェリーはコロナの影響もあってか、例年の夏の帰省シーズンに比べると幾分空いている。

船内に持ち込んだ弁当をノンアルコールビールで無理矢理胃の中に流し込み、仮眠をとる。昨日の東北地方を襲った豪雨の影響もなく、航海中に大きな揺れはなかった。

深夜0時15分 定刻に青森に着岸する。

土砂崩れのため通行止めだった東北自動車道は懸命の復旧作業をおわらせ、夕方に通行止め解除となった。青森インターから高速道路に乗る。お盆休み前半の東京方面へ向かう上り車線に帰省渋滞はなく順調に車を走らせる。

国見パーキングで休憩をとる。疲れが出てきたが長く休んでる時間はない。重たい腰を上げ再び走り出す。

郡山から、磐越道に入る頃、夜が明けてきた。今日も暑くなるだろうことを朝日が告げていた。

新潟から北陸自動車道を走り、有磯海サービスエリアに入る。食欲はないが、何か食べないと体力が持たない。

富山に着いた。本来の目的は富山県内で終わるはずだった。しかし、休む間もなくボスから追加指令が下る。急ぎ富山駅に向かう。

12時46分 北陸新幹線つるぎ715号金沢行に乗り込む。

金沢駅では13時20分 金沢発特急サンダーバード24号に乗り換え新大阪に向かった。

新大阪駅帰省ラッシュのピークで過密状態だ。マスクをしっかり口に押し当て、決してはずさないようにした。急ぎ16時14分新幹線のぞみ163号博多行きに乗り込む。

フェリーで3時間の仮眠を取ったとはいえ、ロクな休憩を取っていない。しかし車内で寝てしまうと乗り過ごす危険があるので小倉まで必死に睡魔と闘う。

18時47分 6分遅れでやってきたソニック45号に乗り込み大分へ向かう。

当時は斬新なデザインで一世を風靡したが、今となってはレトロめかしい車内。県の鳥「めじろ」を命名する案もあったが、スピード感のある現在の名前が採用された。カーブの多い日豊本線を高速で走る振り子型の車両は電化の進まない北海道の都市間特急と同じく大きく揺れる。軽く乗り物酔いを覚えながら20時7分 大分駅に降り立った。

大分駅近くのビジネスホテルに入り、明日の指示を受け取る。

 

つづく