フィリピンに行ってきた3

2月18日

11:00 モーベンピックホテル

今日は泳ごう!!

入国後通過した巨大な橋を渡り、空港のあるマクタン島を目指す。都会の喧噪を離れ、ローカル色漂う曲がりくねった道を進む。所々に守衛が入り口に立った高級住宅エリアを通り過ぎ、リゾート感たっぷりの高級ホテル モーベンピックホテルに到着した。白とオーシャンブルーを基調とした高層ホテルにはプライベートビーチが備えられている。

ランチバイキング付きの入場料を支払い浜辺に降り立つ。幅150m程の砂浜は緩やかな弧を描いており、両側には目隠しの樹木や高い塀で囲われている。奥行200mには白いブイが浮かび完全に外界から遮断されている。

適当な場所に陣取り、ビールを片手に気持ちいい潮風にさらされながら波音に耳を傾ける。静かな海に足を踏み入れ、心地よい海水に揺られながら少しずつ沖に出る。海中を見ると5m位の深さだ。潜ってみると僅かだがサンゴが点在している。エサをついばむオレンジや黄色の魚。魚の数は多くないが南国の海を満喫する。水面に出て振り返るとビーチを隔てていた壁の外側が見えた。作られたリゾートの外側は昨日見たスラムのような木製の小屋が海にせり出している。裸同然の子供達が海に飛び込み楽しそうにはしゃいでいる。小屋の下から海に垂れ流されている液体は生活排水だろう。急に現実に引き戻され陸に上がる。

昼食はホテル内にあるバイキングレストランだ。ウェルカムドリンクのスパーリングワインを飲み、フィリピン料理に舌鼓を打つ。今回の旅行は料理にハズレはない。みな大満足していた。

昼食後、しばらくすると雲行きが怪しくなってきた。天気予報通り雨が降ってきた。3時間の滞在だったが南国の海を満喫できて大満足である。

14:15 ラプラプ像

マクタン島の領主であったラプラプ王はキリスト教への改宗を迫るマゼランと激しく戦った。サンゴ礁に阻まれ思うように海戦ができず、白兵戦に持ち込まれたマゼランはラプラプ王に完敗して命を落とした。剣と盾を持ち、海を見つめるラプラプ像は、まぎれもなくフィリピンの英雄だ。彼を称えるマクタンシュラインという記念塔も近くにあり多くのフィリピン人観光客で賑わっていた。

15:00 アレグレ ギター工場

マクタン島の主要産業は観光とギター輸出である。そう言えば空港やホテルでギターのハードケースを持った人がいたのを思い出した。ミヤギがギター工場に行きたいと言い出した。アレグレ ギター工場は工程順に見学でき、最後はギターショップが待ち構えている。価格は数千円から数十万円するものまで幅広い。壮絶な値段交渉の末、ミヤギが購入した。

ホテルまでの道中、地元のお祭りに遭遇する。民族衣装を着て隊列を組み楽器を打ち鳴らしながらパレードをしている為、随所で渋滞が発生している。民家の庭先では鶏を闘わせていた。富裕層の娯楽として闘鶏や闘犬が盛んで練習をし ているようだ。

18:00 フィリピン料理 チカアン

フィリピン郷土料理が本日の夕食だ。テラスを設けた二階建てのレストランは、ぼんやりとライトアップされ、お洒落な佇まいだ。

定番のピールセンビールを供に食が進む。豚肉の串焼きや小さめの揚げ春巻き、特にイカの丸焼きはソースが美味しく、甘くも辛くも無く、ほのかな塩味があり絶品だ。

20:00 マンゴツリー~インフィニティ

食後に再び夜の街に繰り出す。マンゴツリーに再び行くことになった。まだ時間が早いのか縦長の店内には女の子や先客がいない。一時間位、時間をつぶして、カラオケのある店に行くことになり、再びインフィニティに移動する。さらに一時間、歌声を響かせながら夜は更けていく。

23:00頃 ホテル ニシの部屋

ニシの部屋で飲みなおす。ミヤギは用事があるらしい。日本から大量に持ち込んだ珍味も残り少なくなってきた。焼酎やビールを飲みながら、これまでの旅行を振り返る。

ニシのスマホに入っている中国発のアプリ、微信(ウェイシン)の話題になった。LINEのように手軽にメールや写真の送信ができるのはもちろんのこと、最大の特徴は写真付きで登録しておけばGPS機能を使い、自分の近くにいる人を探し出してコンタクトをとることができる。気が合えば出会うことも可能だ。しかしリスクもある。相手が一般人なのか、性別はもちろんのこと病気の心配もある。

≪●且●≫「お、いい子いるぞ」

ニシがスマホを見せる。きれいなフィリピン女性が映っている。英語で挨拶メールを送ってみると即答で返事が来る。ニシと心が一つになった。

23:10 『この娘を呼んでみよう』

まずは値段交渉をしてみる。

『アサマデ イクラデスカ?(英語)』

「3500ペソ」即答だ。しかし素人にしては価格が高い。この娘に対して猜疑心がでてきた。ひょっとして背後に男か組織がいるかもしれない。ここは相手の出方を見る為、一度値引きをした方がいい。

『3000ペソ』間髪入れず「OK」と返事が来る。どよめく二人。疑いは晴れないが行くしかない。ホテル名を告げ、到着したら連絡するようにメールする。

‥‥‥

一瞬、部屋に静寂が戻った。果たして本当に一人で来るのだろうか?相手を睡眠薬で眠らせ金品を奪い立ち去るという昏睡強盗も流行っているようだ。さらに、スマホの写真だけで相手を見つけられるのだろうか?何か目印になるものが必要だ。シャツの色か、手にジュースを持っているとか。

その間にも

「イマ、イエヲ デマス」

「イマ、タクシーニ ノリマシタ」

着々と近づいてきている。ニシの表情から余裕が消えている。その時、

 

『 ピーン ポーン 』

 

無機質な呼び鈴の音が響く。部屋に緊張が走る。どうやってホテルのセキュリティを突破したのか、第一、部屋番号を伝えたかどうかの記憶がない。警察かマフィアかもしれない。

ニシは恐る恐る扉を開けた。半分位開けたところでニシの表情が凍り付く。緊張は最高潮に達した。ゆっくりとドアが開く。

(^^♪ ジャンガ ジャンガ ♪

そこには満面の笑みで買ったばかりのギターを弾きならすミヤギの姿があった。

一体何が起こったのか理解できなかった。張り詰めた緊張が一気に破裂した。安堵を通り越して爆笑の空間に代わる。その後も笑いが止まらず、娘のことはすっかり忘れ、彼女の姿を見ることなく解散となってしまった。翌朝、聞いてみると解散後、少し遅れてホテルに娘が到着したらしい。ロビーまで迎えに行って一晩過ごしたようだ。

彼女は本当に素人で組織も男の影もなかった。しかし、お互いにリスクもある。恐ろしい時代である。

 

つづく