朝が来た。曇っていたが雨の心配はなさそうだ。昨日の疲れがとれていない。でも頑張ったおかげで今朝は時間に余裕がある。
まずは温泉だ。
長い廊下を渡る。
イソジンの臭いがするヨードたっぷりの温泉で心も体もさっぱりした。
現実に戻り、エンジンを考える。晩成温泉はわずかにゆるやかな坂の上にある。坂の下に荷物をまとめ、バイクを坂の上に押し歩く。そう、困った時の「押し掛け」だ。
エンジンが動かなかったら、どうしよう。昨日の受付の男性といい地元の人には何となく助けを求めづらい。JAFは来るのにどれだけ時間かかるのだろう。また来たとして、その後どうすればいいんだ?色々と頭をよぎる。
ギアをニュートラルに入れる。坂を下りながらペタペタとバイクを足こぎして目を閉じ、祈りながら二速に繋ぐ。
ブ,ブ,ブオンッ=3
\( *皿* )/「ヤッター」辺りに誰もいないことをいいことに叫んでしまった。
(よかったぁ、よかったぁ、)そう呟きながら涙を流している自分に気が付いた。よほど心細かったのだろう。
晴天といえないが実に清々しく道がつづく。
天馬街道に入り、牛を眺める。
日高山脈を越えるあたりの湧水もおいしい。
バッテリーも充電され始めたのか、安定した電圧を保ち始めた。
時間が止まったような無人案内所。
こういった、何とも言えない寂しさ、侘しさの世界に興奮を覚えるのは私だけではないはずだ。
浦河で友人と会いリッチな昼食。
そしてフラッグ購入。
旅も終盤だ。あとは帰るだけだ。
のんびり帰るか。
ワープ!!
バイクの不調を第一に考え、苦渋の決断のもと、長万部まで高速道路を使うこととする。決して楽だからではない。
長万部で最後のフラッグゲッツ!
ただいまっ!
よくがんばったねっ!
走行距離483㎞
つづく